立川 脱毛のツール

もしいつまでも労働集約的な産業にうつつを抜かしていたら、1億もの人口の胃袋を満たした上に生活水準を欧米並みに引き上げることなど、とうてい不可能でした。 理論にかなっていたかどうかは別として、日本は重化学工業に力を入れるよりほかに道がなかったのです(以下省略)。

以上では、もっぱら簿価ベースの財務諸表にもとづいて資本コストの日米比較をおこなってきた。 資本コストを厳密に計測するためには、証券や株式の市場価格に織り込まれている、投資家の期待収益率を推計する形でおこなわれる。
それをもとに決まる加重平均資本コストこそが、設備投資のもたらすキャッシュフローの割引率に相当するというわけである。 わが国の金融システムは低収益性を許容すると同時に、低収益を世界一高く評価してきた株式市場でもあったことを指摘した。
したがって、株価をベースにしてそれと整合性のある投資家の期待収益率という形で株主資本コストを定義すると簿価ベースの収益率比較の場合よりも、わが国企業の資本コストはいっそう低く推計されることになる。 加重平均資本コストのうち、負債コストに関しては実効金利を使用すればよい。
しかし、株主資本コストの推計は金利ほど容易ではない。 1つの推計方法は、株価益回り(1株当たり利益÷株価、株価収益率の逆数)から出発して、税率、償却方法の違いなどを修正して益回りを推定するアプローチである。
このアプローチによる代表的な実証研究が、ニューヨーク連銀による日米英独4カ国の資本コスト比較研究である。 これまでにおこなわれた様々な研究の成果を集大成したもので、最も包括的な資本コスト比較研究の1つである。
その一部を示したのが図233である。 同研究は、株式および負債の市場価格から出発して4カ国のインフレや税制、減価償却方法や在庫評価基準の違い、銀行と企業の関係や株式保有構造の違いなどから生じると思われるあらゆる相違を除去した後、株主および債権者を満足させるために必要な企業収益の水準がどのように違うかを比較している。

同図にもとづいて、この研究の結論の一部を紹介すれば次の通りである。 (1)インフレ調整後の実質負債コストに関しては4カ国の聞にほとんど差がみられない。
(2)株主資本のコストに関しては、大きな差が見受けられる。 1980年代後半について名目ベース(税引後)でみると、日本は6%であったのに対して、アメリカは1115%と、倍もしくはそれ以上になっている。
(3)インフレ調整後の実質加重平均資本コストは、旧西ドイツと日本が2%内外と低く、イギリスは4%内外、アメリカは6%内外となっている。 ここから明らかなように、この研究結果も前節で述べた結論と同様に、日米企業の資本コストの差はもっぱら株主資本コストの差から生じていることを示している。
低収益性と高株価の相乗作用が、日本の大企業の資本コストをいっそう低下させていたと考えられる。 かくして日本は、戦後復興から1970年代までは「安価で良質な労働力」によって、それ以降は「安価で良質な資本」によって「よいものを安く」競争を展開し、Nのパイの持続的拡大を続けてきた。
そして70年代の二度のオイルショックを見事に乗り切り、80年代に入ると、アメリカに次ぐ第二の経済大国、金融大国となり、80年代半ばには世界ーの純債権国になったのである。 戦後日本のリーダーたちは、あらゆる創意工夫を凝らして製造業大国、輸出大国になることをめざしたに違いない。
しかし、一体どれほどの人が、その帰結として日本が超低資本コスト国となり、世界ーの債権固となる日がくると考えたであろうか。 現実には、半永久的に続くと考えられたハードカレンシー不足の制約を解消し、むしろ固としては慢性的にあり余るドルを持て余すようになったのである。
次に、もう1つの変数である人的資源面のパフォーマンスをみてみよう。 失業率は1980年代を通じて2%台と先進国でも抜群に低い水準で安定し、事実上完全雇用状態が続いてきた。
一方、生活レベルの向上で、わが国の平均寿命は男女とも世界最長の部類に属するところまで延び、老齢人口(65歳以上)比率も80年代半ばに2桁に乗せた。 他方、女性の進学率の向上や就業機会の増大などを反映して平均結婚年齢が高まり、出生率は80年代後半には顕著な低下を示しているoこの結果、わが国の総人口の伸びは目立って鈍化し、労働人口の伸びも1%台の低いところまで鈍化した。

これを反映して1988年以降有効求人倍率はを上回る状態、つまり絶対的人手不足の状態になってしまった。 この結果、合法・非合法を含めて、わが国にも外国人労働者が本格的に流入し始めたことは周知の通りであ1990年代に入って以降の不況局面で、短期的には雇用情勢は一転して、失業や就職難が深刻な問題になっている。
しかし、中長期的な人口動態をふまえたわが国の労働力見通しによれば、わが国は21世a紀に入って確実に縮小過程を迎えると考えられる。 経済審議会の2010年委員会は、わが国人口構造の変化の予測を示している。
これによれば、わが国の生産年齢人口は1995年に、労働人口は2000年に、そして総人口も2010年にはピークをつけて、以降は減少に転じるとしているまた、世界的にみても、21世紀には先進国の人口は急速に減少に向かう。 アメリカの元商務長官のピーター・ピーターソンは、フォーリン・アフェアーズ誌への寄稿論文で、少産少死・高齢化の進行で先進国が共通して生産人口、労働人口の減少に見舞われ、現先進国と途上国の聞のバランスが、経済・金融面だけでなく、政治的軍事的にも大きく変化する可能性があると指摘した。
この論文の中で彼は、人口に占める65歳以上の高齢者の比率が18、5%に達する状態を「フロリダ化」と呼んだが、日本はイタリアに次いで21世紀の初頭(2004年)には、早くもフロリダ化するとみられている。 このように、戦後長らくわが国の経済や企業経営の大前提であった労働力余剰、慢性的な潜在失業問題は、1980年代を通じて基本的に解消したのである。
これがNの運営にかかわる、第2の大きな条件変化といえよう。 これこそある意味ではわが国の戦後の経済発展、あるいは日本資本主義が見事に成功したことの証だったのである。
しかし、そのことは同時に、わが国が戦後長期的に目的関数として位置づけ、資源の政策的優先配分方式の大義名分にしてきた雇用の最大化が、実は達成されてしまったことを意味する。 そしてまた、大きな制約条件であった資本不足も解消したのである。
この結果、稀少な資本を制約条件として雇用を最大化するというわが国の戦後の資源配分方式は、1980年代半ばにはその歴史的役割を終えたのである。 今にして思えば、約10年前にわが国は資源配分方式に関して、欧米へのキャッチアップを旨とした発展途上段階の政策優先配分方式を卒業し、効率性、収益性最大化のためのより普遍的な市場型資本主義に移行すべきであったといえよう。
4、2クルーグマンが指摘するアナロジー。 マクロ的に大成功した日本の最近の行き詰まりについて、より普遍的にどのような説明が可能であろうか。

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